豆知識:「大腸カメラ」と「大腸内視鏡検査」の違い
多くの方が「大腸カメラ」と呼んでいる検査ですが、実は正確には「大腸内視鏡検査」といいます。
「カメラ」という表現だと撮影だけをイメージしますが、内視鏡は観察・診断・組織採取・治療まで可能な高度な医療機器です。当院では医学的に正確な「大腸内視鏡検査」という表現を使用しています。
もちろん「大腸カメラ検査を受けたい」とおっしゃっていただいても問題ありません。
患者様により正確で安全な検査をご提供するために、適切な医学用語を使用していることをご理解いただければと思います。
大腸内視鏡検査とは?

大腸内視鏡検査は、肛門から直径約12mmの柔軟な内視鏡を挿入し、大腸全体を直接観察する検査です。
直腸から盲腸まで約150cmの大腸全体を内側から詳細に観察することで、がんやポリープなどの病変を発見できます。
従来のバリウム検査とは異なり、病変を直接視認できるため診断精度が格段に高く、現在の大腸疾患診断における標準的な検査となっています。
検査中に病変が発見された場合は、組織採取や小さなポリープの切除を同時に行うことが可能です。
大腸内視鏡検査が必要な症状と受診タイミング

大腸の病気は初期段階では症状が出にくいことが特徴ですが、以下のような症状がある場合は積極的に検査をおすすめしています。
症状の程度に関わらず、早期発見により治療選択肢が大幅に広がります。
こんな症状があれば検査をおすすめします
■ 血便・便に血が混じる
血便の原因として、痔核や大腸癌がよく知られており、特に大腸癌を見逃さないことは、とても重要なことです。痔による血便、下血と自己判断をして、検査をしてみると大腸がんと診断されることがあります。
血便が見られた場合は自己判断せず、医師の検査を受けましょう。
■ 便通の変化
- 慢性的な下痢や便秘
- 便が細くなった
- 残便感が続く
■ 腹部症状
- 原因不明の腹痛が続く
- 腹部膨満感
- 体重減少
■ その他の症状
- 原因不明の貧血
- 疲労感が続く
40歳以上の方への定期検診の重要性
大腸がんと診断される人は40歳以降から増加し始め、特に50歳代で顕著に増加し、年齢が高くなるほど大腸がんの罹患率が高くなります。
そのため、症状がなくても40歳を過ぎたら定期的な大腸内視鏡検査をおすすめします。早期の段階で病変を見つけることで、がんになる前に治療できる可能性が高まります。
大腸がんの約5〜10%は、遺伝性のがん(遺伝性腫瘍)と言われています。そのため、家族歴がある方は、より早い段階からの検査を検討することが重要です。
便潜血陽性の方へ|大腸内視鏡検査の必要性

便潜血陽性は、目に見えない出血のサインであり、大腸の異常を知らせる大切な信号です。便潜血検査では病変の種類や大きさが分からず、がんの早期発見・治療には直接観察が不可欠です。
「痔からの出血だから大丈夫」と考える方もいらっしゃいますが、痔があっても他の病気の存在を否定できません。また、便潜血検査を再度行うことは意味がありません。
大腸内視鏡検査は診断と治療を同時に行える唯一の検査で、ポリープの切除により将来のがん化を予防でき、確実な診断につながります。
大腸内視鏡検査でわかる病気
腫瘍性疾患
- 大腸がん(早期がん・進行がん)
- 大腸ポリープ(腺腫)※がん化の可能性があるため切除が必要
- 過形成性ポリープ※がん化リスクは低い
炎症性疾患
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- 虚血性腸炎
- 感染性腸炎
その他の疾患
- 大腸憩室症
- 過敏性腸症候群の確定診断
- 原因不明の血便・下痢の診断
内視鏡ベルラクリニック銀座の特徴
25年以上の経験を持つ内視鏡専門医が全検査を担当

内視鏡検査の精度と安全性は、医師の技術力に大きく左右されます。
当院では、25年以上の内視鏡検査経験を持つ専門医が全ての検査を担当し、微細な病変も見逃さない精密な診断を行います。
豊富な経験により、患者様の負担を最小限に抑えながら質の高い検査を実施いたします。
鎮静剤で苦痛を感じさせない内視鏡

当院では、点滴から鎮静剤を投与することで、眠ったような状態で検査を受けていただけます。
鎮静剤は不安や緊張感が和らぐため、過去につらい思いをした方や大腸内視鏡検査に苦手意識を持つ方でも楽に検査を行うことができます。
検査後は回復室で十分な休息をとっていただき、安全に帰宅していただけます。
忙しい方にも!胃内視鏡検査との同日検査対応

忙しい現代の方々のスケジュールに配慮し、当院では胃内視鏡検査と大腸内視鏡検査を同日に実施することが可能です。
一度の来院で上部・下部消化管の包括的な検査を受けていただけるため、時間的負担の軽減はもちろん、鎮静剤の投与が1回で済むことで身体への負担も軽減されます。
また、検査前日からの絶食や当日朝の腸管洗浄といった前処置も1回の準備で両方の検査に対応でき、お仕事の調整も最小限に抑えることができます。
さらに、上部・下部消化管を同時に評価することで、より総合的な診断が可能となります。
専用トイレ付きの個室空間を完備

大腸内視鏡検査では前処置として腸管洗浄が必要です。
「下剤を飲んだ後、トイレの回数が多くなり落ち着かない」「他の人の目が気になる」といったお声を多くいただきます。当院では、そうした患者様の不安を解消するため、専用トイレ付きの個室をご用意しています。
プライバシーを確保しながら、トイレまでの移動を気にすることなく、リラックスして前処置を受けていただけます。
患者様に合わせた下剤の選択が可能

大腸内視鏡検査で最も負担となる腸管洗浄について、当院では複数の下剤から患者さまの体調や好みに合わせて選択していただけます。
液体タイプが苦手な方には錠剤タイプを、味が気になる方には飲みやすいタイプをご用意し、前処置の負担を可能な限り軽減いたします。
リカバリールーム完備で検査後もゆったり回復

鎮静剤を注射した場合、リカバリールームで1~2時間休憩してからの帰宅となります。当院では快適なリカバリールームを完備し、検査後も安心してお休みいただけます。
なぜ苦痛を感じない大腸内視鏡検査が可能なのか?
大腸内視鏡検査では、肛門から約150cmの大腸全体に内視鏡を挿入し観察します。苦痛の原因として、内視鏡挿入時の圧迫感、腸の曲がりくねった部分を通過する際の牽引感、検査中に送り込むガスによる腹部膨満感などがあります。
開腹手術後などで腸が癒着している方や腸の長い方は、多少の苦痛を伴うことがあります。また、不安や緊張により筋肉が硬直することで、さらに不快感が増すこともあります。
しかし、現在では技術の進歩と適切な方法により、苦痛を大幅に軽減した検査が可能になっています。
鎮静剤による意識下での検査

最も重要なのは鎮静剤の使用です。点滴から適量の鎮静剤を投与することで、眠ったような状態で検査を受けていただけます。
多くの患者様が「気がついたら検査が終わっていた」とおっしゃるほど、検査中の記憶がほとんどありません。
専門医による熟練した技術

経験豊富な医師による技術が、検査時間の短縮と負担軽減を実現します。
当院では25年以上の経験を持つ内視鏡専門医が、患者様の腸の形状を読み取りながら、無理な力を加えることなく丁寧に検査を進めます。
下剤(腸管洗浄剤)の種類と選び方
大腸内視鏡検査で最も負担となるのが、検査前の腸管洗浄です。当院では、患者様の体調や好みに合わせて複数の下剤から選択していただけるため、前処置の負担を可能な限り軽減いたします。
液体タイプ(モビプレップ・ニフレック・サルプレップ)
項目 | モビプレップ | ニフレック | サルプレップ |
---|---|---|---|
服用量 | 1L | 2L | 1L |
味 | やや酸っぱい | レモン風味 | オレンジ風味 |
効果発現 | 約1〜2時間で排便開始 | 確実な腸管洗浄効果 | 約1〜2時間で排便開始 |
特徴 | 服用量が半分で負担軽減 | 長年使用されており実績豊富 | 服用量が半分で飲みやすい味 |
適している方 | 初回検査の方、液体に抵抗がない方 | 過去に使用経験がある方 | 味にこだわりがある方 |
液体タイプのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・即効性があり、効果が確実 ・医師にとって洗浄状態の予測が立てやすい ・多くの医療機関で使用実績がある | ・大量の液体を短時間で飲む必要がある ・味や臭いが苦手な方には負担 ・飲みきれない場合がある |
錠剤タイプ(ビジクリア)
項目 | 詳細 |
---|---|
服用量 | 5錠を15分に1回服用し、合計10セット(50錠)服用 |
水分 | 1回約200mL、合計約2Lの水と一緒に服用 |
効果発現 | 液体タイプと同等の洗浄効果 |
特徴 | 液体の味や臭いが苦手な方に適している |
適している方 | 液体タイプが苦手な方、高齢者 |
錠剤タイプのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・液体特有の味や臭いがない ・錠剤なので飲みやすい ・水以外の飲み物(お茶、麦茶、ウーロン茶、紅茶でも服用できる | ・50錠という錠数の多さ ・十分な水分摂取が必要 |
下剤の選び方
下剤タイプ | おすすめの方 |
---|---|
液体タイプ | ・初回検査を受ける方 ・確実な効果を重視する方 ・短時間で前処置を完了したい方 |
錠剤タイプ | ・過去に液体タイプで苦労した、吐いてしまった経験がある方 ・味や臭いに敏感な方 ・高齢の方や嚥下機能に不安がある方 |
下剤の種類は、患者様の体調や服薬歴、過去の経験などを医師がヒアリングした上で最適なものを選択いたします。ご不安な点がございましたら、初診時に遠慮なくご相談ください。
大腸内視鏡検査の流れ
STEP1:事前説明(15〜30分)

まずはLINEまたはお電話で検査のご予約をお取りください。
ご来院時は以下の内容をお伺いします。
- 現在服用中のお薬
- 既往歴・アレルギーの有無
- 抗血栓薬服用の有無(休薬について事前相談)
検査についての詳しい説明書をお渡ししますので、不明な点がございましたら遠慮なくお尋ねください。
STEP2:検査前日の過ごし方

正確な検査のためには、前日の準備がとても大切です。
- 夕食は20時頃までに、消化の良いものを控えめに
- 繊維質の多い食事は避けるようにしましょう
- 前日の20時以降は固形物の摂取は避けていただきますが、水分(水、お茶、コーヒー(ミルクなし)、炭酸飲料など)は飲んでいただいて構いません
- 下剤が処方された方は検査前日の眠前に内服していただきます
- 早めの就寝を心がけましょう
STEP3:検査当日朝の注意事項

検査当日を迎えたら、以下の点にご注意ください。
- 朝食は摂らずにご来院ください
- 水分(水、お茶など)は検査直前まで摂取可能です
- 当日の朝の薬はいつも通り服用ください。ただし、糖尿病の薬を飲まれている方は、事前に担当医にご相談の上、当日は服用しないようお願いします
- 常備薬を服用されている方は、事前に医師に相談しておくことが大切です
STEP4:来院・受付・着替え(約10分)

予約時間にご来院ください。
受付後、検査着にお着替えいただきます。アクセサリー類は全て外していただきます。
STEP5:前処置(約2~4時間)

専用トイレ付きの個室で前処置を開始します。
- 大腸をきれいにする下剤を飲み始め、腸管の洗浄を行います
- 数回に分けて合計で2リットル程度飲みます
- 何度かトイレに通うと、液体のような便(水様便)になります
当院では専用トイレ付きの個室をご用意していますので、プライバシーを確保しながらリラックスして前処置を受けていただけます。
STEP6:検査室での準備・鎮静剤投与(約5分)

前処置が完了し、便が透明になったら検査室にご案内します。
- 検査台に横になり、おなかをラクにします
- 点滴から鎮静剤を注射することで、うとうとしているうちに検査が終わる方も多くいらっしゃいます
STEP7:検査開始・内視鏡挿入(10〜20分)

- 肛門から内視鏡を挿入して検査を始めます
- 検査は約20分程度で終了します
- ポリープなどの病変が見つかった場合は、その場で切除も行います
STEP8:検査終了・回復室での休息(約1時間)

- 回復室で横になってお休みいただきます
- 鎮静剤の効果が完全に切れるまで、1時間程度安静にします
- 気分が悪い時や変調のある時は、すぐに医師にお伝えください
当院では快適なリカバリールームを完備しており、検査後も安心してお休みいただけます。
STEP9:結果説明・帰宅準備(10〜30分)

身支度を整えたら、検査結果についてご説明いたします。
- 撮影した画面を見ながら検査の結果を医師から詳しく説明いたします
- 組織採取などを行った場合、検査結果を後日(通常1週間後)来院いただくことがあります
- 不明な点や心配なことがございましたら、遠慮なくご質問ください
STEP10:帰宅後の注意事項

帰宅前後にいくつかの注意事項があります。
■ 当日の注意事項
- おなかが張ってくるので、おならをどんどん出しましょう
- 検査後の車の運転は禁止です(翌日からOK)
- 飲食は1時間後から可能です
- 便に少量の血が混じる場合があります
■ 組織採取やポリープ切除を行った場合(2~3日間)
- 検査後の激しい運動は避け、入浴はせずにシャワー程度ですませてください
- 刺激のある食事・飲酒・コーヒーなどは避けるようにします
当院の大腸内視鏡検査の費用
症状(血便、便秘、下痢など)や検診の結果で必要とされた場合は保険適用となります。以下は、自己負担割合ごとの目安です。
検査内容 | 3割負担 | 2割負担 | 1割負担 |
---|---|---|---|
検査のみ | 約6,000円 | 約4,000円 | 約2,000円 |
炎症などがあり病理組織検査を行った場合 | 10,000円〜20,000円 | 6,000円〜12,000円 | 3,000円〜6,000円 |
ポリープの切除 | 20,000円〜30,000円 | 13,000円〜20,000円 | 7,000円〜10,000円 |
ポリープの有無で費用が大きく変わるため、実際の請求額は検査後に確定することが一般的です。
※企業健診などの一部自費診療の場合は料金が異なります。詳しくはお問い合わせください。
費用に含まれるもの
- 検査前の問診・診察
- 下剤などの前処置薬
- 大腸内視鏡検査
- 鎮静剤使用(ご希望の場合)
- 検査後の結果説明
- 検査画像の提供
よくある質問
継続して服用するお薬
- 降圧薬(血圧を下げる薬):検査当日も必ず服用
- 心臓病の薬:通常通り服用
- 抗血栓薬(血液をサラサラにする薬):ポリープ切除が必要な場合のみ休薬
- 糖尿病薬:検査当日は休薬
- 観察のみの場合:検査当日(鎮静剤使用後30分〜1時間の安静後)
- ポリープ切除・組織検査を行った場合:約1週間後(病理検査結果待ち)
- 自動車・オートバイ・自転車すべて終日運転禁止
- 翌日からは運転可能
- 公共交通機関、ご家族による送迎、タクシーでのご来院をお願いします
- 観察のみの場合:検査後1時間程度で摂取可能(消化の良いものから少しずつ)
- ポリープ切除を行った場合:当日夕方から食事開始(消化の良い食事を選択、アルコール・刺激物は数日間控える)
執筆医師
-
髙橋 敬二
- 【経歴】
東邦大学医学部卒業
東邦大学医学部付属大森病院
大森赤十字病院消化器科
松島クリニック 副院長
松島クリニック汐留院 院長
【資格】
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会学術評議員・関東支部評議員
日本内科学会認定内科医
人間ドック認定医
【所属学会】
日本内科学会
日本消化器内視鏡学会
日本消化器病学会
日本大腸肛門病学会
日本人間ドック学会
【参照元】
- 大腸内視鏡検査ってどんな検査ですか? | 日本消化器内視鏡学会
- 内視鏡検査・治療 | 希少がんセンター
- 2cm以上の早期大腸がんに対して内視鏡治療(ESD)が 治療の第一選択となり得ることを前向きコホート研究で確認 早期治療による術後QOLと生存率向上が期待|国立がん研究センター
- 便潜血/東京大学 保健センター
- 遺伝性のがんの特徴 | 遺伝診療センター | 大阪医療センター
- 大腸がんファクトシート 2024 | Colorectal Cancer Factsheet 2024 | 国立がん研究センター
- 大腸がん検診:[国立がん研究センター がん情報サービス 医療関係者の方へ]
- Niedermaier T, et al. “Sensitivity of Fecal Immunochemical Test for Colorectal Cancer Detection Differs According to Stage and Location.” Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2020;18(13):2920-2928.e6. (PMID: 31988043)