「たかが便秘」と、お腹の不快感を我慢してやり過ごしていませんか。便秘は、あなたの健康寿命に関わる体からの重要な警告サインかもしれません。
近年の研究では、便秘が死亡リスクと関連すると報告されており、特に心不全や慢性腎臓病の持病がある方のリスクが顕著です。(※1)
この記事では、便秘解消に良いとされる飲み物・食べ物や、注意点を詳しく解説します。「便秘を解消したいけれど何を食べたり飲んだりすれば良いかわからない」という方は、ぜひ参考にしてください。
便秘解消に良いとされる飲み物7選

つらい便秘の解消には、日々の生活習慣、特に毎日の飲み物から見直すことが重要です。便秘解消に効果が期待できる飲み物として、以下の7つを解説します。
- 水・白湯
- お茶
- ココア・オーツミルク
- 牛乳
- ヨーグルトドリンク・乳酸菌飲料
- 甘酒
- スムージー
①水分量を増やす水・白湯
便秘を考えるうえで大切な飲み物の一つが水や白湯です。
体内の水分が不足すると、大腸は内容物から水分を過剰に再吸収します。水分を吸収された便は硬くなり、排便しにくくなるため便秘につながる仕組みです。
水や白湯を意識して飲むことで、体内の水分量が増え、水分不足による便秘の解消が期待できるでしょう。食事以外で1日あたり1.5〜2リットルの水・白湯の摂取を目指してください。一度にがぶ飲みせず、1日に何回も分けてこまめに飲むことがおすすめです。
特に、朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲む習慣をつけることを推奨します。空っぽの胃に水の重みが加わることで、自然な便意が促される効果が見込めます。冷たい水は腸への刺激が強いので、お腹が冷えやすい方は体を内側から温められる白湯が良いでしょう。
②手軽に水分補給できるお茶
便秘解消に向けた水分補給として、お茶を飲むこともおすすめです。以下の表に示すお茶であれば、リラックス効果が期待でき、便秘解消につながる可能性があります。
| お茶の種類 | 成分の説明 |
| 麦茶 | 食物繊維が豊富で、腸内環境を整えられる傾向がある |
| ルイボスティー | ミネラルやポリフェノールを多く含み、リラックス効果が期待できる |
| ローズヒップティー | ビタミンCが多く、善玉菌が増えやすい環境づくりのサポートをする |
緑茶やほうじ茶には、利尿作用があるカフェインが含まれており、かえって尿の量を増やしてしまい、便が硬くなる可能性があるため注意してください。
③食物繊維が豊富なココア・オーツミルク
便秘解消には、食物繊維を多く含むココアやオーツミルクもおすすめの飲み物です。
食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があります。不溶性食物繊維は便のカサを増やし、ぜん動運動(便を体外に送り出す動き)を活発化させます。一方、水溶性食物繊維は、便を柔らかくして滑りを良くし、善玉菌のエサにもなる栄養素です。
水溶性・不溶性の食物繊維をバランス良く摂れる飲み物がココアやオーツミルクです。ココアに含まれる不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収して大きく膨らみ、便の量を増やします。オーツミルクは、水溶性食物繊維を豊富に含み、腸内環境を整えるサポートをします。
④乳糖を多く含む牛乳
牛乳は、乳糖(ラクトース)と呼ばれる成分を含んでおり、便秘解消におすすめの飲み物です。乳糖は小腸で分解・吸収されにくいため、そのままの形で大腸まで到達し、便通を促します。大腸に届いた乳糖の役割は、主に以下の2つです。
- 便を柔らかくする
- 腸を刺激してぜん動運動を活発化させる
ただし、一般社団法人Jミルクによると、日本人には乳糖を分解する酵素の活性が低い乳糖不耐症の人が少なくありません。(※2)牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたり、下痢になったりする場合は、乳糖不耐症の可能性があります。
乳糖不耐症の方は、まず少量から試したり、温めてゆっくり飲んだりして飲み方を工夫してください。
⑤整腸作用のあるヨーグルトドリンク・乳酸菌飲料
便秘解消にお悩みの方は、整腸作用のあるヨーグルトドリンク・乳酸菌飲料を飲みましょう。
私たちの腸内には、多種多様な細菌が共生し、腸内フローラを形成しています。腸内フローラのバランスが崩れ、悪玉菌が多くなると、便秘などの不調が起こりやすくなることが報告されています。(※3)
ヨーグルトドリンクや乳酸菌飲料は、乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌を直接補給し、腸内環境を整えるのに役立つ飲み物です。善玉菌には、以下のような働きが期待できます。
- 腸内を弱酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑える(※4)
- 腸のぜん動運動を促して排便をスムーズにする(※4)
- 腸のバリア機能を高めて有害物質の侵入を防ぐ
最近では、「生きて腸まで届く」と表示された商品も多く見られます。しかし、摂取した菌が腸に定着するわけではないため、毎日継続して摂ることが大切です。同じ商品を2週間ほど続け、自身の体調の変化を確認することがおすすめです。
⑥オリゴ糖と食物繊維が豊富な甘酒
甘酒は、栄養価の高さだけでなく、便秘解消にも役立つプレバイオティクスが豊富な飲み物です。プレバイオティクスとは、腸内にいる善玉菌のエサになる成分のことです。
甘酒に含まれるオリゴ糖は、プレバイオティクスの一つで、善玉菌の代表であるビフィズス菌を増やし、活発化する働きがあります。善玉菌が元気になると、腸内環境が改善され、便通が整いやすくなります。甘酒には食物繊維も含まれており、便通をサポートするでしょう。
⑦食物繊維や乳酸菌を含むスムージー
スムージーは水分と食物繊維を同時に摂取できる飲み物であり、便秘解消に良いとされています。野菜や果物を丸ごと使って作ることで、水溶性・不溶性の食物繊維をバランス良く摂れます。ミキサーで食材を細かく粉砕するため、消化吸収しやすくなる点もメリットです。
スムージーを作る際は、以下の食材を組み合わせることがおすすめです。
| 食材の種類 | 食材の具体例 |
| 食物繊維が豊富な食材 | りんご、キウイ、バナナ、ベリー類などの果物や小松菜、ほうれん草などの野菜 |
| 善玉菌をプラスする食材 | 無糖のヨーグルトやヨーグルトドリンク、乳酸菌飲料 |
| 善玉菌のエサをプラスする食材 | オリゴ糖シロップやはちみつ |
市販のスムージーは手軽ですが、糖分が多く含まれている場合があるため、できれば手作りしましょう。体を冷やすことが心配な方は、常温の食材を使ったり、白湯を少量加えたりする工夫をしてみてください。
飲み物と一緒に摂りたい便秘解消に役立つ食べ物

便秘解消には、飲み物とあわせて食事内容を見直すことも重要です。便秘解消に役立つ主な食べ物は、以下の4つです。
- 乳酸菌を多く含む発酵食品
- 食物繊維が豊富な食べ物
- オリゴ糖が多い食べ物
- 良質な脂質
①乳酸菌を多く含む発酵食品
乳酸菌を多く含む発酵食品は、腸内の善玉菌を直接補給する働きがあり、便秘解消に役立つといわれています。
善玉菌は、悪玉菌の増殖を抑え、腸内を健康な弱酸性に保つ腸内細菌です。善玉菌が作り出す乳酸や酢酸は、腸の壁を優しく刺激し、便を押し出すぜん動運動を促すので、便通をサポートします。(※4)
乳酸菌には、主に2つの種類があります。
| 菌の種類 | 特徴と多く含まれる食品 |
| 動物性乳酸菌 | ・ヨーグルトやチーズ、乳酸菌飲料などに含まれる。 ・短時間で増殖する力が強い特徴がある。 |
| 植物性乳酸菌 | ・味噌、納豆、キムチ、ぬか漬けなどに含まれる。 ・胃酸などの過酷な環境に強く、生きて腸まで届きやすいとされている。 |
ただし、特定の菌だけでなくさまざまな種類の善玉菌をバランス良く摂ることが大切です。腸内フローラの多様性が、よりしなやかで健康な腸内環境を育みます。朝食にヨーグルト、夕食に味噌汁と納豆など、日々の食事に少しずつ発酵食品を取り入れてみてください。
②食物繊維が豊富な食べ物
食物繊維は、便秘解消に良い成分として広く知られており、腸の健康維持には積極的に食べることがおすすめです。
食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があり、それぞれで異なる働きをします。2種類の食物繊維を「不溶性:水溶性=2:1」のバランスで摂ることが、便秘解消に理想的とされています。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を多く含む食品の例を、以下の表にまとめました。
| 食物繊維の種類 | 多く含まれる食品の例 |
| 不溶性食物繊維 | 玄米、ごぼう、きのこ類、豆類、さつまいも、切り干し大根 |
| 水溶性食物繊維 | 海藻類(わかめ、ひじき)、こんにゃく、果物(りんご、キウイ)、大麦、オーツ麦 |
食物繊維を意識して摂る際は、十分な水分を一緒に補給してください。水分が不足した状態で不溶性食物繊維ばかりを多く摂ると、便が硬くなり、かえって便秘を悪化させる可能性があります。
③オリゴ糖が多い食べ物
オリゴ糖を多く含む食べ物も、便秘解消に役立つとされています。
オリゴ糖は善玉菌のエサとなる成分です。胃や小腸で消化・吸収されにくいため、大腸まで直接届き、善玉菌、特にビフィズス菌の栄養源となります。オリゴ糖を栄養として善玉菌の数が増え、活動が活発化すれば、腸内環境はより良好な状態に傾きます。
オリゴ糖を多く含む食品は、以下のとおりです。
| 種類 | 食材の例 |
| 野菜類 | 玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス |
| 果物類 | バナナ、りんご |
| 豆類 | 大豆、きなこ |
ヨーグルトにバナナやきなこをトッピングすると、善玉菌である乳酸菌とオリゴ糖を同時に摂取できるでしょう。市販のオリゴ糖シロップを、砂糖の代わりに料理や飲み物に活用する方法もお手軽です。
④良質な脂質
脂質は健康に良くないイメージがあるかもしれませんが、便秘解消には適度な良質な脂質が不可欠です。脂質には、便通をスムーズにするための2つの大切な働きがあります。
ひとつは、脂質が分解されて生じる脂肪酸が腸のぜん動運動を刺激し、便を前へと押し出しやすくする作用です。もうひとつは、脂質が便の表面をコーティングすることで腸内での滑りを良くし、排便をスムーズにする作用です。
これらの働きにより、適度な脂質の摂取は便秘の予防や改善にも役立ちます。ただし、どんな油でも良いわけではなく、不飽和脂肪酸を多く含む脂質であることが重要です。オリーブオイルやアマニ油・えごま油、青魚、アボカド、ナッツ類などに多く含まれています。
間食をスナック菓子からナッツに変えたり、炒め油をオリーブオイルにしたりするなど、少しの工夫で良質な脂質を摂取できます。ただし、脂質はカロリーが高いため、摂りすぎには注意し、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
長引く便秘は自己判断せず、早めに医師へ相談を

便秘は飲み物や食生活の工夫で改善するケースもありますが、数週間以上続く便秘や、市販薬を使っても効果がない場合は注意が必要です。
大腸ポリープや大腸がん、腸の炎症や狭窄など、消化器に関わる病気が背景にある場合もあります。こうした病気は早期に発見・治療することが大切であり、自己判断で様子を見続けるのはリスクがあります。
大腸内視鏡検査などで原因を調べ、適切な治療やアドバイスを受けるためには消化器内科を受診しましょう。
まとめ
便秘改善の基本は、十分な水分補給です。水分を補給したうえで、便のカサを増やす食物繊維や腸内環境を整える善玉菌、善玉菌のエサとなるオリゴ糖をバランス良く摂取することが大切です。
まずは朝起きたらコップ一杯の水を飲む習慣から始めてみましょう。ヨーグルトにバナナやオリゴ糖を加えるなど、簡単な組み合わせもおすすめです。
内視鏡ベルラクリニック銀座では、便秘などの消化器疾患に関する相談を広く受け付けています。お腹の症状でお悩みのある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
参考文献
- Bing Liu, Xinyue Wu, Yuxin Wang, Xinhua Hu.Association between constipation and risk of cardiovascular or all-cause mortality: a meta-analysis.Ann Med,2025,57(1),2561803.
- 一般社団法人Jミルク:「よくわかる!乳糖不耐」
- Fan Zheng, Yong Yang, Guanting Lu, Joo Shun Tan, Uma Mageswary, Yu Zhan, Mina Ehab Ayad, Yeong-Yeh Lee, Daoyuan Xie.Metabolomics Insights into Gut Microbiota and Functional Constipation.Metabolites,2025,15,4,p.269.
- Linlin Wang, Shurong Yang, Chunxia Mei, Nan Tang, Jialiang Wang, Qiangqing Yu, Gang Wang, Gaojue Wu, Jianxin Zhao, Wei Chen.Lactobacillus paracasei Relieves Constipation by Acting on the Acetic Acid-5-HT-Intestinal Motility Pathway.Foods,2023,12,22,p.4176.



