トイレで便に血が混じっているのを見つけたとき、「もしかして大腸がんでは」という不安が頭をよぎった経験はありませんか。血便は、自覚症状の少ない大腸がんが発する数少ない初期サインの一つです。
この記事では、大腸がんと痔の出血の違いから、早期発見につながる検査方法を解説します。記事を読むことで、ご自身の安心と健康を守るための第一歩としてお役立てください。
大腸がんの初期には血便が出る

大腸がんは、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多い病気です。血便が体から現れる最初の症状であり、病気の発見につながるケースも少なくありません。
大腸がんの初期には血便が出ることがあり、以下の点を確認しましょう。
- 血便が出る理由
- 進行に伴う症状の変化
- 血便以外の初期症状
- 心配ないケースもある
血便が出る理由
大腸の粘膜にがんができると、便が通過する際に擦れることで出血し、血便が出ることが多いです。成長した大腸がんの表面は、潰瘍化・壊死しており、摩擦や圧力で破れやすいことが原因です。がんの部分が潰瘍状にただれて出血するケースもあります。
大腸がんになると、目に見える鮮やかな血便だけでなく、便にわずかに血液が混じる「便潜血」という状態になることも多くあります。胃などの消化管で発生した出血が便に混じることで、黒っぽい便が出ることもあるでしょう。
進行に伴う症状の変化
大腸がんは進行するにつれて、血便の症状が悪化します。最初は拭いた紙に付く程度だった出血が、便全体に混ざるようになります。出血の頻度が増え、ほぼ毎回の排便で見られるようになるでしょう。
症状が悪化し、出血量が増加することで、便器の水が赤く染まることもあります。慢性的に出血が多くなると、貧血を引き起こす場合もあります。血便の変化に気づいたら、大腸がんが進行している可能性があるので、早めに医療機関を受診することが大切です。
がんが大きくなると、腸を完全に塞いでしまう「腸閉塞(ちょうへいそく)」を起こしかねません。腸閉塞は激しい腹痛や吐き気・嘔吐などを引き起こし、緊急手術が必要になることもあります。
血便以外の初期症状
大腸がんになった場合、血便以外にも以下のような初期症状が現れることがあります。
- これまでは快便だったのに、急に便秘がちになった
- 便秘と下痢を繰り返すようになった
- 便が以前よりも細くなった気がする
- 排便後も、まだ便が残っているような感じがする(残便感)
- お腹がゴロゴロ鳴ったり、張ったりすることが増えた
- 健康診断で貧血を指摘された、または顔色が悪いとよくいわれる
- 階段を上るだけで動悸や息切れがする
- 最近、なんだか疲れやすく、身体がだるい状態が続く
- ダイエットをしていないのに、体重が減ってきた
これらの症状は、がんから目に見えないほどのわずかな出血が続くことで貧血になったり、がん細胞が体の栄養を消費したりすることで起こります。複数の症状が重なったり、長く続いたりする場合には、大腸がんの可能性も考えて検査を受けることが大切です。
大腸がんと痔の出血の違い

痔と大腸がんの出血の特徴的な違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | 痔(いぼ痔・きれ痔など) | 大腸がん |
| 血の色 | 鮮やかな赤色(鮮血)が中心 | 暗い赤色(暗赤色)から鮮血までさまざま |
| 便との関係 | 便の表面に付着、または排便後に滴下 | 便と血液が混じり合っていることが多い |
| そのほかの特徴 | 排便時に紙に付く、便器が赤くなる | 粘液が混じること(粘血便)がある |
| 伴う症状 | ・肛門の痛み ・かゆみ ・腫れ | ・腹痛 ・便秘 ・下痢 ・残便感 ・貧血症状 |
痔の出血は肛門付近で起こるため、血液は空気に触れて間もない鮮やかな赤色です。一方、大腸がんの出血は、がんができた場所で色が異なります。ただし、血液の色の違いはあくまで一般的な目安であり、ご自身で見分けることは難しいです。
近年の内視鏡検査は、診断精度が向上しています。画像増強内視鏡(IEE)という技術が使われており、がん組織に特徴的な血管の模様を浮かび上がらせることで、出血の原因をより正確に特定します。(※1)
血便に気づいたら自己判断で放置せず、消化器内科や肛門科を受診してください。
血便が見られるほかの病気

大腸がん以外でも、血便が見られる病気はあります。ここでは、「主な病気」と「血便の色での見分け方」を解説します。
主な病気
血便の原因となる主な病気には、大腸ポリープや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、大腸憩室(けいしつ)出血、虚血性腸炎、感染性腸炎などがあります。
大腸ポリープは、大腸の粘膜にできる隆起性の病変で、良性のものが多いですが、一部は大腸がんへと進行する可能性があります。出血は比較的少量で、便に血が混じる程度のことが多いです。
腸に慢性的な炎症が起こる病気は、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)です。炎症の部位が大腸の粘膜の場合は潰瘍性大腸炎、口から肛門まで消化管の場合がクローン病と呼ばれます。炎症性腸疾患は、血便のほか、下痢や腹痛を伴うことが多いです。
大腸憩室出血は、大腸の壁にできた袋状のくぼみ(憩室)から出血する状態です。突然、大量の血便が出ることが特徴で、多くの場合は腹痛を伴いません。高齢者に多く見られます。
虚血性腸炎は、大腸への血流が一時的に悪くなることで、腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気です。急な腹痛のあとに血便が出ることが多く、高齢者や動脈硬化のある方に起こりやすいです。
感染性腸炎は、細菌やウイルスなどの感染により腸に炎症が起こる病気です。下痢や腹痛とともに血便が出ることがあり、食中毒などが原因となることが多いです。
血便の原因となる病気はさまざまで、それぞれ症状や治療法が異なります。血便が見られた場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診することが大切です。
血便の色での見分け方
血便の色は、出血している場所を推測するための手がかりになります。便の色での見分け方は、以下の表のとおりです。
| 便の色 | 考えられる出血部位 | 主な病気の例 |
| 鮮血便 (真っ赤) | 肛門、直腸など肛門に近い場所 | 痔、裂肛(きれ痔)、直腸がん、大腸ポリープ |
| 暗赤色便 (赤黒い) | 大腸の奥(結腸など) | 大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室出血、虚血性腸炎 |
| 粘血便 | 大腸全般 | 潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎 |
| 黒色便 (タール便) | 食道、胃、十二指腸 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん |
便の色によって出血部位をある程度推測できますが、病気の特定まではできません。
血便は、あなたの体が発している重要なサインです。色や量、頻度にかかわらず、一度でも血便に気づいた場合は、消化器内科などの専門の医療機関を受診し、正確な診断を受けましょう。
大腸がんを早期発見するための検査方法

大腸がんは、早期の段階で発見できれば、体への負担が少ない方法で治癒を目指せる病気です。大腸がんを早期発見するための以下の検査方法を解説します。
- 血便が出たときに受診すべき診療科
- 便潜血検査
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
- 注腸検査・CT検査
血便が出たときに受診すべき診療科
血便に気づいたら、自己判断で様子を見ることはやめましょう。消化器内科や胃腸科、肛門科、内視鏡専門クリニックを受診することを推奨します。
かかりつけの医療機関がある場合は、まず担当医に相談し、専門医を紹介してもらうのも良い方法です。以下の症状が一つでも当てはまる場合は、早めの受診を心がけてください。
- 血便が繰り返し出る、または量が増えてきた
- 便に血だけでなく、ネバネバした粘液も混じっている
- 便秘や下痢を繰り返すなど、お通じのリズムが変わった
- 便が以前より細くなった気がする
- お腹の張りが続く、たまにお腹が痛む
- 特別な理由がないのに体重が減ってきた
- 健康診断で貧血を指摘された
便潜血検査
便潜血検査は、大腸がんの早期発見のために行われる方法の一つです。便の中に目には見えないほど微量な血液が混じっていないかを調べる検査であり、市区町村や職場の大腸がん検診で用いられます。
便潜血検査で陽性と判定された場合、大腸のどこかから出血している可能性があります。陽性だからといって、必ずしも大腸がんというわけではなく、痔や良性のポリープ、腸の軽い炎症が原因であることも多いです。
便潜血検査で陽性となった方が精密検査(大腸内視鏡検査)を受けると、3〜5%の方に大腸がんが見つかると報告されています。(※2)
便潜血検査のメリットとデメリットは以下のとおりです。
| メリット | デメリット |
| 自宅で簡単に便を採取できる | 出血していない、ごく初期のがんは見つけられない |
| 食事制限がなく、身体的な負担が少ない | 痔など、がん以外の原因でも陽性になることがある |
| 費用が比較的安い | 陰性でも、がんの可能性を完全に否定はできない |
がんであっても常に出血しているわけではないため、検査で陰性と出ても安心はできません。血便などの気になる症状がある場合は、検診の結果にかかわらず、専門医に相談してください。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸内視鏡検査は、一般に「大腸カメラ」と呼ばれ、大腸がんの診断で重要な検査です。
大腸内視鏡検査の利点は、診断と治療を同時に行える可能性があることです。疑わしい部分を見つけた際には、組織の一部を採取(生検)し、がん細胞の有無を調べることで確定診断ができます。
がんになる可能性のある大腸ポリープを発見した場合、その場で切除することも可能です。ポリープの切除は、大腸がんを予防する重要な方法の一つです。
近年、内視鏡技術は目覚ましく進歩しており、画像増強内視鏡(IEE)という技術が使われています。IEEは診断の精度を向上させ、従来の白色光の内視鏡では見つけるのが難しかった、平坦な形をしたごく初期のがんの発見も容易になりました。(※2)
大腸がんが疑われる症状が見られた場合は、大腸内視鏡検査を検討してください。
注腸検査・CT検査
大腸がんの検査で行われる方法として、注腸検査やCT検査もあります。注腸検査やCT検査は内視鏡検査が難しい場合や、がんの広がりを詳しく調べる目的で実施されます。
注腸エックス線検査(バリウム検査)は、肛門からバリウム(造影剤)と空気を注入し、大腸を膨らませた状態でレントゲン撮影をする検査です。大腸全体の形や、がんによって腸が狭くなっていないか(狭窄)などを大まかに把握できます。
CT検査は、X線を使って身体の断面図を撮影する方法です。大腸がんそのものを見つけるのではなく、腸壁にできたがんの深さや、周囲のリンパ節やほかの臓器に広がっていないかなどを調べます。
まとめ
血便の原因は痔をはじめさまざまですが、大腸がんのサインである可能性も否定できません。色や量だけで「きっと痔だろう」と自己判断してしまうのは危険です。
一度でも血便に気づいたら、ご自身の安心のために消化器内科や肛門科、内視鏡専門クリニックなどに相談することが大切です。大腸がんは早期に発見できれば、治る可能性が高い病気です。
内視鏡ベルラクリニック銀座では、内視鏡専門医による大腸カメラ検査を実施しています。血便以外にも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Sakamoto T, Akiyama S, Narasaka T and Tuchiya K. “Advancements and limitations of image-enhanced endoscopy in colorectal lesion diagnosis and treatment selection: A narrative review.” DEN open 6, no. 1 (2026): e70141.
- 公益財団法人 日本対がん協会:「大腸がんの基礎知識〜症状と治療〜」.





