大腸がんの可能性を指摘されたとき、「どれくらいの速さで進行するの? 」「生存率はどれくらい? 」と、不安になりますよね。
大腸がんの多くは、ポリープから10年以上かけてゆっくり進行するとされており、必ずしもすぐ命に関わるわけではありません。(※1)一方で、がんの種類や見つかったステージによって進み方が大きく変わることもあります。
この記事では、年齢ごとの進行速度の特徴、ステージ別の進み方や治療法をわかりやすく解説します。不安を減らすためにも、正しい知識を身につけましょう。
大腸がんが進行する仕組みと知っておきたいポイント

大腸がんは、大腸の内側を覆う粘膜から発生します。ほとんどの場合、最初は良性のポリープ(できもの)として芽を出し、時間をかけて少しずつ大腸の壁の奥深くへと根を伸ばすように広がっていきます。
進行の仕組みで知っておきたい3つのポイントは以下のとおりです。
- ポリープからがんになるまでの速さ
- ステージごとの進行速度
- がんの種類別の進行速度
ポリープからがん化するまでの速さ
大腸がんの約8割は、良性のポリープががん化して発生すると考えられています。多くの場合、ポリープががんになるまでには、10年以上かかるといわれています。(※1)
すべてのポリープが同じ速さで進むわけではなく、進行速度は以下の要因に影響されます。
| 要因 | 内容 |
| ポリープの種類 | がんになる可能性のあるポリープと、その可能性が極めて低いポリープがある |
| ポリープの大きさ | 一般的にポリープは大きいほど、がんになる確率が高くなる(※2) |
| 生活習慣 | 喫煙や過度な飲酒、肥満、運動不足などの生活習慣は、体内で慢性的な炎症を引き起こし、ポリープの成長やがん化を速める可能性がある |
ステージごとの進行速度
大腸がんの進行度は、ステージ(病期)で表されます。
ステージごとの進行速度を以下の表にまとめています。
| ステージ | がんの状態 | 進行速度の目安 |
| 0〜I期 | がんが粘膜やすぐ下(粘膜下層)の浅い層にとどまっている状態 | 進行は比較的ゆっくりで、年単位で進むことが多い |
| II期 | がんが腸の壁の筋肉よりも深い層まで達している状態 | 進行が少し速くなり始め、治療をしなければ次の段階に進む可能性がある |
| III期 | がんが腸の近くにあるリンパ節に転移している状態 | 進行はさらに加速し、治療しないと数か月〜1年程度で次の段階に進む可能性がある |
| IV期 | 肝臓や肺など、大腸から離れた臓器に転移している状態 | 進行は速く、月単位での変化が考えられるため、早急な治療方針の決定が必要 |
ステージによって進行のペースは大きく異なります。早期の段階で見つけることができれば、進行が緩やかで、負担が少ない治療で根治を目指せる可能性があります。
がんの種類別の進行速度
大腸がんの進行の速さは、がんの種類によって大きく違います。
高分化型腺がんは、がん細胞の形が正常に近く、ゆっくり進行するタイプです。転移もしにくく、高齢の方に多く見られます。
低分化型腺がんや未分化がんは、細胞の形が崩れており、増えるスピードが速いのが特徴です。短期間で周囲に広がったり転移したりすることもあります。粘液がんや印環細胞がんなどの特殊ながんは、発見された時点ですでに進行していることもあります。
遺伝的な体質が関係している場合は、若い年代でも発症しやすく、進行も早い傾向があります。このように、大腸がんといっても進み方はさまざまで、種類を見極めることが治療や経過観察の大切なポイントになります。
年代別に見る大腸がんの進行速度と特徴

がん細胞の性質は、年代ごとに体の状態や生活背景などによって異なるため、がんの育ちやすさや進行速度に特徴的な傾向があります。
ここでは年代を以下の3つに分けて解説します。
- 30〜40代:進行が早く気づきにくい世代
- 50〜60代:発症リスクが高く進行速度も増す世代
- 70代以降:進行と合併症の影響が大きい世代
ご自身やご家族の状況と照らし合わせながら、年代ごとのポイントを理解していきましょう。
30〜40代:進行が早く気づきにくい世代
仕事や子育てに追われる多忙な時期であり、ご自身の体の変化をつい後回しにしてしまう傾向があります。この年代で見つかる大腸がんは、症状が出にくく気づきにくい一方で、見つかったときには進行しているケースも少なくありません。
30〜40代の大腸がんの特徴は以下のとおりです。
- 症状が乏しく、見過ごされやすい
- 悪性度が高くがんの進行が速い傾向がある
- 検診を受ける機会が少なく、発見のきっかけを逃しやすい
50〜60代:発症リスクが高く進行速度も増す世代
50代を過ぎると、大腸がんの発症リスクは上昇します。50〜60代では、毎年の検診をきちんと受けるかどうかが早期発見と治療負担の大きな差につながります。症状がなくても、年1回の便潜血検査や、数年に1回の大腸内視鏡検査を取り入れることが、将来の治療負担を減らすことにつながります。
50代の大腸がんの特徴を以下の表にまとめました。
| 特徴 | 内容 |
| 罹患率の上昇 | 高カロリー摂取や肥満、過量のアルコール、喫煙などの要因が、腸内環境に影響を与えていると考えられる |
| 加齢による体の変化 | ・年齢とともに、がん細胞の増殖を見張る免疫の力や、傷ついた細胞を修復する力が衰えてくる ・同じ性質のがんであっても、若い頃より進行が早まる可能性がある |
50〜60代は検診の対象となる年代であり、定期検査を受けることで早期発見につながる可能性が高まります。
70代以降:進行と合併症の影響が大きい世代
高齢になるほど大腸がんの発症率は高まります。70代以降は、がんそのものの進行に加え、持病や体力が治療に影響するのが特徴です。
70代以降の大腸がんの特徴は以下のとおりです。
- 症状が出にくく発見が遅れやすい
- がんが進行した状態で見つかりやすい
- 長年の生活習慣や細胞の老化が影響する
高齢の方は、高血圧や心臓病などを抱えていることが多く、手術の麻酔が危険になることや、使える抗がん剤の種類が限られることがあります。そのため、治療の方法を選ぶ際に大きく影響します。
検査・受診が重要な理由

検査や受診は、これからどのような治療を受け、どのような生活を送るのか、選択肢を確保するためのステップです。
ここでは検査・受診が重要な理由を解説します。
早期に見つけることで治療負担を軽減できる
大腸がんは早期に見つかるほど体への負担が少ない治療で済み、治療後の生活も大きく変わりません。早期なら内視鏡でがんを取り除けることが多く、傷もほとんどなく短い入院で日常生活に戻れる可能性があります。
進行してから見つかった場合は、開腹手術が必要になることがあります。体への負担が大きく、入院や回復に時間がかかり、医療費も高くなりやすい傾向があります。早期発見は治療の選択肢を広げ、体や時間、費用の負担を減らせる重要なポイントです。
治療の選択肢を広げ、生活の質を維持できる
がんの治療法は、発見されたときの進行度で大きく変わります。早期であればあるほど、治療の選択肢は広がり、治療後の生活の質を保ちやすくなります。
しかし、がんが進行して腸の壁を深く突き破ったり、ほかの臓器に転移したりすると、治療の選択肢が限られます。がんが広がっている範囲を大きく切除する必要がある場合や、抗がん剤治療や放射線治療などの副作用を伴う治療が必要になります。
早い段階で専門医に相談し、精度の高い検査を受けると、体への負担が少ない治療法を選べる可能性があります。
進行度を調べる主な検査方法

がんの進行度(ステージ)を調べる検査は、主に以下の3つです。
- 自宅でできる便潜血検査
- 内視鏡検査(大腸カメラ)
- 画像検査(CT・MRI)
ここでは、それぞれの検査が持つ役割と特徴を解説します。
自宅でできる便潜血検査
便潜血検査は、便の中に目には見えないほど微量な血液が混じっていないかを調べる検査です。痛みや食事制限がなく、精密検査が必要な人を見つけ出せる特徴があり、以下のような検査判定で行われます。
| 検査判定 | 詳細 |
| 陽性と判定された場合 | ・痔(じ)など良性の病気で陽性になる可能性がある ・大腸からの出血があるサインのため、必ず精密検査を受ける必要がある |
| 陰性と判定された場合 | ・早期のがんやポリープの場合、検査のタイミングによっては陰性になることがある ・体調の変化があれば、検診結果に関わらず医療機関に相談する |
内視鏡検査(大腸カメラ)
内視鏡検査は、大腸がんの診断を確定するために重要な検査です。
便潜血検査で陽性となった場合、詳しい検査が必要と判断された場合に行われます。肛門から先端にカメラがついた細くしなやかなスコープを挿入し、医師がモニターを通して大腸の粘膜をすみずみまで直接観察します。
この検査には、主に以下の役割があります。
- 病変の直接観察:ミリ単位の小さなポリープや、粘膜のわずかな色の変化、凹凸まで詳細に観察することができる
- 組織の採取(生検):がんが疑われる部分の組織を少量つまみ取り、顕微鏡で調べることで、がん細胞の有無を診断する
- ポリープの切除:がんになる前のポリープや、ごく初期のがんであれば、検査と同時にその場で切除する場合もある
画像検査(CT・MRI)
画像検査は、ベッドに横になっているだけで、体に痛みを感じることなく行えます。
内視鏡が大腸の内側を見る検査であるのに対し、画像検査は大腸の壁の深さやほかの臓器への広がりなどを調べる検査です。
画像検査は主に以下の2種類があります。
| 画像検査 | 特徴 |
| CT検査 | ・X線を使って体の断面を輪切りにしたように撮影する ・がんが転移していないか、広範囲を確認するのに適している |
| MRI検査 | ・強力な磁気と電波を使って体の断面を撮影する ・骨盤の中にある直腸がんの診断に有用 ・がんが周囲の臓器に広がっているかを、CT検査よりも詳しく評価できる |
これらの画像検査から得られた情報は、がんの進行度を正確に判断するために役立ちます。その結果をもとに手術の方法や抗がん剤が必要かどうかを見極め、一人ひとりに合った最適な治療計画を立てることができます。
ステージ別の治療法と生存率

大腸がんの治療法は、がんの進行度を示すステージによって変わります。ステージが早いほど、体への負担が少ない治療法でがんを完全に取り除くことができる可能性が高まります。
ここではステージ別の標準的な治療法と、治療成績の目安となる5年生存率を解説します。
ステージ0〜I期(内視鏡治療と外科手術)
ステージ0〜I期は、がんが大腸の壁の浅い部分(粘膜や粘膜下層)にとどまっている、早期の段階です。この段階で見つかった場合、内視鏡治療が治療の第一選択肢になります。
内視鏡治療は、手術の傷が残りにくく、痛みが少ないため、体への負担が少ないです。日帰り、または数日程度の入院で済み、早期の社会復帰が可能です。
がんが粘膜下層の深くまで達していたり、一度に切除するには大きすぎたりした場合は、外科手術が必要になります。近年、お腹に数か所の小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術やロボット支援下手術が急速に普及しており、体への負担を抑えられることが期待できます。(※3)
ステージII〜III期(手術と再発予防の抗がん剤治療)
ステージごとの特徴は以下のとおりです。
- ステージII期:がんが大腸の壁の深い層(筋層の外)まで達しているものの、リンパ節への転移はない状態
- ステージIII期:がんの深さにかかわらず、近くのリンパ節への転移が認められる状態
この段階での治療は、がんを完全に取り除くための外科手術が基本です。がんができた部分の腸管と、がん細胞が移動している可能性のある周囲のリンパ節を一緒に切除します。
術後の再発予防として、術後補助化学療法を行います。手術では取りきれなかったかもしれない、目に見えない微小ながん細胞を抗がん剤で攻撃することで、将来的に再発するリスクを低減させる効果に期待できます。
術後補助化学療法の詳細について以下の表にまとめました。
| 詳細 | 内容 |
| 対象となる方 | ・主にステージIII期 ・ステージII期のなかでも再発のリスクが高いと判断された方 |
| 治療の進め方 | 多くの場合、約半年間、通院しながら点滴や内服薬で治療を行う |
| 実施条件 | 腎臓や肝臓などの重要な臓器の機能が保たれていること |
ステージIV期(化学療法・分子標的薬・免疫療法)
ステージIV期は、がんが肝臓や肺、腹膜など、大腸から離れた臓器に転移している進行した段階です。
このステージでは、がんの根治を目指しつつ、進行をできるだけ抑えて症状を和らげ、生活の質(QOL)を保ちながら長く向き合っていくことが重要です。治療の中心となるのは、全身に広がったがん細胞に作用する薬物療法です。
主な内容は以下の表にまとめています。
| 薬物療法の種類 | 特徴 |
| 化学療法(抗がん剤) | がん細胞の増殖を直接抑える、薬物療法の基本となる薬 |
| 分子標的薬 | ・がん細胞の増殖に関わる特定の分子だけを狙い撃ちする薬 ・事前の遺伝子検査で効果が期待できるかを予測して使用 |
| 免疫療法 | ・自身の免疫細胞が、がんを攻撃する力を取り戻す手助けをする薬 ・特定の遺伝子変異を持つがんに対して、効果を示すことがある |
これらの薬を単独で、あるいは組み合わせて治療を行います。転移の数や場所によっては、手術で転移したがんを取り除いたり、放射線治療でがんを小さくしたりするなど、薬物療法とほかの治療法を組み合わせることもあります。
各ステージの5年生存率の目安
5年生存率は、がんと診断されてから5年後に生存している方の割合を示す統計データで、治療効果を測るための一つの目安です。
各ステージの5年生存率の目安は以下のとおりです。
| ステージ | 累計5年生存率(2015年症例)(※4) |
| I期 | 92.3% |
| II期 | 85.5% |
| III期 | 75.5% |
| IV期 | 18.3% |
ステージIV期であっても、分子標的薬や免疫療法などの新しい薬が登場し、治療成績は向上している可能性があります。大切なのは、数字に一喜一憂せず、ご自身の体の状態を正確に把握し、担当医と相談しながら、納得のいく治療法を選ぶことです。
まとめ
大腸がんは、多くが良性ポリープから10年以上かけてゆっくり進行します。(※1)早期に見つければ内視鏡での切除など負担の少ない治療で根治を狙うことができ、治療後の生活への影響も最小限に抑えられます。
がんのタイプや年齢によっては進行が早くなることもあり、自覚症状が出ないまま進むケースもあります。不調を感じたときや検診で異常を指摘された際は、年齢に関わらず早めに専門医へ相談することが重要です。
内視鏡ベルラクリニック銀座では、精度の高い大腸内視鏡検査を専門医が丁寧に行っています。検査や精密な確認が必要な方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
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- Zessner‑Spitzenberg J., Waldmann E., Rockenbauer L.-M., Demschik A., Penz D., Trauner M., Ferlitsch M. Polyp size is associated with colorectal cancer death across histologic polyp subtypes: a retrospective study of a screening colonoscopy registry Endoscopy, 2024, 56(11), p.820‑827
- Negrut RL, Cote A, Caus VA, Maghiar AM.Systematic Review and Meta-Analysis of Laparoscopic versus Robotic-Assisted Surgery for Colon Cancer: Efficacy, Safety, and Outcomes—A Focus on Studies from 2020–2024.Cancers,2024,16(8),1552.
- 国立研究開発法人 国立がん研究センター:「院内がん登録2014−2015年 5年生存率集計報告書」




